また通常の退職金についても、五十歳を超えれば自己都合であっても会社都合と同様に支給がなされることになっていたといいます。 長年京都にてエンジン設計に携わってきましたが、健康面に不安を抱えるなか単身赴任を必要とする異動辞令が下ったこともあり、そのときは相当悩みました。
しかし結局、退職に踏み切ることができませんでした。 新しい赴任先でも設計に関連した業務に携わってきましたが、やはり「病気にでもなったら」という不安がぬぐえず、ころ合いを見て会社に京都に戻りたい旨を願い出ました。
「設計から品質管理に変わってもいいなら……」というのが会社側の返事であり、設計という仕事に未練はあったものの、京都に戻ることを決断したといいます。 希望退職者募集は、その一年半ぐらい後のことでした。

対象は四十五歳以上の社員で、募集枠は八00人。 Iさんは早速、妻に相談しました。
そして、妻の「しょうがないわね」というお墨つきをもらって、応募することとなったのです。 応募者は募集枠を大幅に超える一二00人にも膨れあがりましたが、年齢の高い者を優先するという会社側の方針もあり、五十五歳のIさんの希望は叶えられました。
退職するにあたっての、上司との個人面談の席。 「ずいぶん長い間、頑張ってもらったけど、辞めてからはどうするんだい」「喫茶店をやりたいと思っていましたので、その方向で頑張ってみるつもりです」「そうか……」。
上司は、それ以上はなにもいいませんでした。 円満退職の成立です。
また、退職者に対しては再就職支援サービスが用意されており、二社の再就職支援会社から好きなほうを選べるということで、説明会が開かれました。 その席で、Iさんは勇を鼓して質問しました。
「私は、自分で独立しようと思ってますが、そういうことでも支援していただけるのですか」この問いかけに対してどれだけ前向きな反応が得られるか、それを基準にIさんは再就職支援会社を決めたといいます。 「失業給付をもらっている間になんとかしたいという気持ちや、もし独立が叶わないなら再就職もというお気持ちも少しはあるのではないか」そんなふうに感じたLCAの担当コンサルタントは、まず通常どおりにIさんに研修を受けていただき、これまで培ってきたキャリアの棚卸しを行なった後、個別のカウンセリングを行ないました。
「喫茶店をやるということは、Iさんにとってはまるで未知の世界に飛びこむことですから、まずは外食産業という業界のことや、喫茶店の経営とはどういうものなのかを知るためにも、一度、そういう会社に勤めてみるというのはどうですか」人生の転機を迎えた利用者の方が起業というかたちで夢を追いかけるのは本当に素晴らしいことですし、それを応援するのは、利用者の方々が豊かなセカンドライフを手にするのを支援するというわれわれの事業理念にも適っています。 四十年以上にわたって経営コンサルティングを行なってきた実績からも、有効なお手伝いができる分野だと自負しているのですが、中高年が起業するというのは、それ自体大きなリスクがあることは間違いありません。

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